依存症とは何か? ほとんどの人が誤解していること


Everything you think you know about addiction is wrong | Johann Hari

 

f:id:shinya-sakamoto-1978:20180627232027p:plain

↑画面右下の「設定」ボタンから日本語字幕を選択できますので、ぜひ彼の主張を聞いてみてください。みなさんが「依存症」や「中毒」について思い込んでいるものがいかに間違っているかが判るはずです。

 


CSIラスベガス 規則がどうであれ君が必要だ

↑2000年公開の人気ドラマ、CSIラスベガスではウォリックは完全なギャンブル依存症です。が、そのせいで同僚が死んでしまいます。しかし、主任は彼の能力を高く評価してくれていて、彼は「生まれ変わります」と誓います。

つまり、主任との心のつながりが確信できたことで、ギャンブルの誘惑を完全に断ち切ろうと思えたというわけです。

 

以前の同僚の一人は結婚し、子供ができたことがきっかけでタバコをやめました。多少の禁断症状は出たそうですが、それほどキツくはなかったそうです。また、たまに飲んだ時には無性に吸いたくなって久しぶりに吸うこともあるそうですが、だからといってまた常習化するわけでもないそうです。

わたしの娘とほぼ同い年の子供を持っていたので、彼とはいろんな話をしましたが、結婚生活は非常にうまくいっているようでした。彼にとっては「結婚・子供」という守るべきものがあり、その文脈の中に仕事があり、銀行でのプログラミング業務ということでしばしば面倒くさいことが起こるのですが彼は常に大人の対応を貫いていました。そういう社会とのつながりがしっかりと築けている中、「タバコを吸い続ければ、そう遠くない将来、ガンになって家族を残して闘病生活に入ることになりはしないかとおびえ続けるのか?それとも、タバコをやめるのか?」という葛藤が生じたとき、守るべきもの、社会とのつながりがしっかりしていれば、依存症から抜けることはそう難しくないということです。

逆に考えると、タバコやギャンブル、酒や甘いもの脂っこいものなど、抜け出せない人を多く見ますが、彼らは社会とのつながりをうまく築けず、守るべきものがあることがかえってプレッシャーとなって強いストレスにさらされていることが推測されるわけです。では、そういう難しい状況をウォリックやわたしの以前の同僚のように、うまく切り抜けることができるのでしょうか? 実はこれは非常に深い問題なのです。わたしにははっきりとした答えは言えませんが、 すごく大雑把に言うなら「いろんなことを器用にこなせる能力」ということだと思っています。

たとえば、絵をうまく描ける、計算が早い、記憶力がいい、運動神経がいい、歌がうまい、手先が器用などなどのありふれた能力から、これは非常に不公平なことではありますが、やはり容姿に恵まれている、背が高いなどの身体的な特徴も大いに関係しているでしょう。

逆に学歴は高いのに、出世できず、結婚もできず、あるいは結婚はしたものの喧嘩ばかりだったり、すぐに離婚してしまったりという人も多いでしょう。高学歴だからと言って「いろんなことを器用にこなせる」わけではないということです。 

 

ちなみにわたしの娘は今、メインの言語は英語で、日本語や中国語はほとんど話しませんが、聞いてだいたいのことは理解できています。言語の面では「器用にこなせている」ので、4歳になってからは、いろんな運動や楽器を楽しめるように配慮しています。100歳まで生きるのが珍しくない時代だといわれることが多い昨今。娘の人生にも様々な岐路が待ち受けているでしょう。ときには困難に見舞われることもあるとは思うのですが、それをうまく乗り切るにはなにが必要なのでしょうか?そこには単純な答えはないと思っています。つねにできるだけ複眼的にものごとを見るようにし、可能な限り多くの選択肢のなかから比較検討する以外には道はないのではないでしょうか。 

 

子供と公園で遊んだりしていると、2歳3歳のころは、たとえばブランコを独り占めしていつまでも他の子に譲らなかったり、おもちゃを他の子から奪ったり、気に食わないことがあると相手をぶったりするのを見て、多くの親は「えっ?うちの子、このままとんでもない問題児になったらどうしよう???」と不安になるものです。わたしも一瞬そういう想像が頭をよぎらないわけではありません。むしろ、ちょっとした兆候から未来を推測し、それに対して適切な対策を打つというのは人類の英知そのものです。

しかし、その未来予想が的外れならどうでしょうか?

自分のことや幼馴染のことを振り返ってみましょう。たとえば小さいころは内気で引っ込み思案だった子が大きくなったら社交的で目立ちたがり屋になることもあります。あるいは、小さいころはいじめっ子だったのに大きくなったら不義を憎み、面倒見のいいひとになることもあるでしょう。

もう少し、身近な話で、依存症あるいは中毒ということを考えてみましょう。

子供にチョコレートをあげたら、ほんとに中毒になってしまうのでしょうか?

子供にゲームをやらせたら、ほんとに依存症になってしまうのでしょうか?

もう一度、最初の動画の主張を思い出してください。周りの人間や社会とのつながりを感じられず常に不安にさいなまれているような人間が依存症などから抜け出すことができないのです。もし、親御さんが子供のことを信頼せず、あれもダメこれもダメ、ああしろこうしろと口うるさく言い続けるほうがリスクが高くないですかね?

宿題やってテストで高い点数を取ったからと言って「いろんなことを器用にこなせる」わけではないとしたら、苦境に立たされた時に酒やギャンブルなどに溺れて抜け出せなくなりはしないでしょうか?

子供にストレスを与えると成長を妨げることになります。宿題やテストという目先の安心感を求めて、上っ面な「能力」を追い求めていないでしょうか?

子供がなにかに夢中になっているときに、脳の深いところ、あるいは体中の神経細胞に心地よい刺激が与えられているのです。それこそが「成長の糧」なのです。それを「中毒になるから」と言って大幅に制限を加えて、やりたくもない宿題を強要しストレスを与えているとしたら、わたしの目から見れば、自ら子供の将来を傷つけているとしか思えないのです。

 

これからいくつかビデオを紹介しますので、有能な人間とはなにかを考えてみましょう。ただ、ママの言うことを大人しく聞いて宿題をやってテストで高得点を取った者が厳しい競争のなかで、高いパフォーマンスを発揮し続けることはできるでしょうか?

 


ザ・プラクティス 憲法の達人が必要


ER 救急救命室 ベントン、テープを聴きながらイメージトレーニング


ザ・プラクティス ユージーン、目撃者の証言を巧みに切り崩す #2


CSIラスベガス ルーフ・ダスト、太陽熱を通さないから冷房代を節約 ダミーを使って検証、コンピュータ・シミュレーションは使わない


ER 救急救命室 カーター、手術室で部長に少し認められる スーザン、心臓病専門医にいびられる、グリーン、甘く見られるな

 

 

では逆に次に見せるビデオはどうでしょうか?

「いろんなことを器用にこなせる」人たちでしょうか? そして、うまくできる人とできない人を分けるものはなんなのか、じっくりと考えてみましょう。


ザ・プラクティス 露出癖の男の主張


ER 救急救命室 90年代アメリカ 情報スーパーハイウェイっていうのが一番頭にくる!


クローズアップ現代+▽ごみマンション急増!?▽ナースも教師もなぜ▽新たな孤立?

↑ここで紹介される人たちはみんな「まじめな日本人」だと思いませんか?

でも、過酷な労働環境の中で「器用にこなせる」レベルを超えてしまって、仕事が追いつかない、気持ちの整理が追いつかない、掃除にまで手が回らない、ということでこのような状況に陥ってしまうわけです。お勉強だけではなく、子供のうちから、幅広い分野での感性や感覚を養っておくことが、このようなパターンを防ぐ唯一の方法だとわたしは考えています。

簡単なことではないかもしれません。しかし、発想の転換をすれば必ずしも不可能ではありません。わたしの提案としては、このお菓子はよくない、とか、このゲームは良くない、という固定観念に執着せずに、大人しく言うことを聞かせる、とか、宿題をちゃんと毎日やる、とか、単純で親にとって都合の良い枠を押し付けないことです。 

 

 

最後に「ロー・アンド・オーダー」シーズン1から酒の依存症から抜け出した男を紹介したいと思います。


ロー・アンド・オーダー 酔っぱらっているようには見えなくても、問題行動を犯すことはある